このプリントは、1980年にカブ隊からボーイ隊への上進者の父兄を対象として書かれたものです。現在でも多少の修正を施せばだいたい通用する内容なので、全文を復刻しました。
目次
- ボーイスカウト運動の歴史
- ボーイスカウト運動の目的
- ボーイスカウト運動の方法
ボーイスカウト運動の歴史
イギリスの軍人、ベーデン・パウエル(以下B-Pと略)は、南アフリカのマフェキングという町の守備司令官でしたが、1899年から1900年にかけて圧倒的な数の敵に包囲されながら、その町を守り通しました。この功績によって、B-Pは国民の英雄となったのです。
南アフリカからイギリスに帰ったB-Pが驚いたことは、かつて軍人のために書いた「斥候術の手引(Aids to Scouting)」までが彼の人気によってもてはやされ、学校の教科書にまで使われていたことでした。それならば少年のために書いた本は、より大きな効果をあげるに違いないと彼は思いました。
B-Pは慎重にスカウティングの構想を立て、1907年夏、20人の少年を集めて実験キャンプを行いました。この試みは大成功でした。1908年の初め、B-Pはさし絵も自分で書いて、訓練の手引き「スカウティング・フォア・ボーイズ」を刊行しましたが、この本が書店に現れるやいなや、スカウトの班や隊が各地に続々とできてきました。こうしてボーイスカウト運動は始まったのです。
ボーイスカウト運動の目的
ボーイスカウト運動の目的は、少年たちが将来良き社会人となれるように、特に性格と健康について改善し、利己心を奉仕の心に置き換え、道徳的にも、肉体的にも社会の役に立つ人間に育て、それを他人への奉仕に使うようにすることにあります。
この目的のために、次の4つの要素を考えます。
1.人格(性格)
規律訓練と名誉の観念を持つこと。神と人に対する敬虔、祖国に対する忠誠心を養います。
2.健康と力
戸外のゲーム、ハイキングとキャンピング、健康的な食事、それに適当な休息によって、自然に健康になります。
3.工作と熟練
道楽のように見えるような工作から仕事の喜びを覚え、生涯の道楽、または生涯の仕事とします。
4.他人への奉仕
自分本位という危険を克服し、善行を習慣とします。他人に対する義務の観念と、危険に際して自分を犠牲とする心がけを養います。
ボーイスカウト運動の方法
ボーイスカウト運動は、ビーバースカウトからローバースカウトまでの一貫教育であること、制服を着用することなどの他に、次の4つの方法を特徴としています。
A.ちかい・おきて
隊員は入隊するに当たって、「ちかい」をたてます。「ちかい」はボーイスカウト運動の基本的な精神であって、自己の信条となるものです。少年は「するな」には従いませんが、「する」には従います。「おきて」は少年の欠点を抑えるためではなく、彼の行動の手引きとして工夫されたものです。
ちかい
私は名誉にかけて次の3条の実行をちかいます。
1、神と国とに誠を尽くし、おきてを守ります。
1、いつも他の人々をたすけます。
1、からだを強くし、心をすこやかに、徳を養います。
おきて
1、スカウトは誠実である。
2、スカウトは友情にあつい。
3、スカウトは礼儀正しい。
4、スカウトは親切である。
5、スカウトは快活である。
6、スカウトは質素である。
7、スカウトは勇敢である。
8、スカウトは感謝の心をもつ。
(注:おきては現在のものに変更しました)
B.班制度
隊員を6人から8人までの固定的な班に分けます。それぞれの班は、信望のある班長のもとで、全ての活動の単位となります。隊は、8人×4班=32人を標準構成とします。班長に真に自由に責任をとらせることは、少年の性格を伸ばす最も良い方法ですし、班員にとっては協力やチームワークを学ぶことができます。班長を助けるために、各班に次長が置かれ、班長のまとめ役として上級班長が選ばれます。
C.進歩制度
少年の年令や能力、興味に合わせて、課目が設定してあります。それを目標に、自ら進んで技能の修得に熱中し、技能が一定の水準に達すると、その記章が与えられるしくみです。ボーイスカウト課程では次の2種類が中心となります。
1、進級章(必修)・・初級章、2級章、1級章、菊章
2、特修章(選択)・・公民章、救護章、ハイキング章など17種類
D.野外活動
ハイキング、キャンピング、追跡、開拓作業などを通じて、からだを強くし、好奇心をかき立ててくれる大自然に親しむことができます。そして、大自然に真の美と驚異とを感じることは、宗教心につながります。